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テレビ番組ガイド・レビュー

日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

古寺名刹こころの百景「醍醐寺(京都)」

2014/07/11 (Fri) 19:00~20:00 BSフジ
キーワード
聖宝、水、秀吉、桜、命
参考
番組公式
 今回の舞台は、京都市南部・洛南にある醍醐寺。この寺を開いたのは、平安時代初期の僧侶で途絶えていた修験道を復興させた、理源大師聖宝。修験道とは、山に分け入り、厳しい修行によって悟りを得る日本独自の宗教で、聖宝は、自然の中での行によって新しい己に出合い、あらゆる命の尊さに気付くことの大切さを人々に伝えた。そうした想いは時代を越え、人から人へと受け継がれながら、花見行事や数々の文化財にも込められてきた。現在、15万点にも及ぶ貴重な文化財を保存し、世界文化遺産に登録されていて、番組では、醍醐寺の起こりから始まる歴史的背景とそこで受け継がれる教えが語られる。
 聖宝は、修行中の山中で湧き出る水の尊さに感じ入り、水を命の源としてとても敬い、自らの祈りを命に対する祈りとして一貫させた(のちの醍醐水)。また、(のちに国宝となる)本尊薬師如来像に、人々を病による苦しみから救いたいという願いを込め、五大堂と、その中に祀られる不動明王を中心とした五大明王には、人々を正しい道へと導き、国家安泰と人々が豊かな暮らしをおくれるようにという大きな願いを託し、自らも実行しようとした。聖宝は自らの教えの中で、実修実証という、行で会得したものを世の中に行動として戻していく心を説き、自ら体現していくことで、その心は人々に受け継がれていったのである。
 しかし、醍醐寺は、応仁の乱後、五重塔以外の多くの伽藍を失ってしまう。そんな醍醐寺を訪ねた 豊臣秀吉は、上醍醐へと続く山道の途中、花の醍醐と呼ばれる槍山で、お堂を失っても立派に生きる自然の逞しさに感銘を受け、この地で壮大な花見を実現したいと考えた。近江、河内、大和などから七百本もの桜を運び込ませるなど、人々は満開の桜と豪華な宴に酔いしれた。そこには、華やかな桜の生命力で人々の心を満たそうという、秀吉の家族や家臣への感謝とねぎらいの心があった。こうしたねぎらいの心は400年たった今でも受け継がれ、醍醐寺は日本有数の桜の名所として多くの人でにぎわい、人々の心を癒している。
 醍醐寺の心は常に命にあって、その命とは自分が使える時間である、と醍醐寺座主・仲田順和氏は語る。特に目に見えない命に呼びかけながら自分の心の佇まいをただし、大切に感謝しながら過ごす。豊かさを得る聖宝の心と教えは、時代を超えて今に息づいているようだ。