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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

美の巨人たち “日本の国宝建築シリーズ”藤原清衡『中尊寺・金色堂』

2012/08/18 (Sat) 22:00~22:30 テレビ東京
キーワード
中尊寺金色堂、阿弥陀、極楽浄土、死、平和、藤原清衡
参考
番組公式
 岩手県平泉にある中尊寺金色堂(国宝)について、その華麗な仏堂が表す世界とともに、そこに秘められた思いを歴史的背景から探る。中尊寺金色堂は、奥州藤原氏の祖である藤原清衡が1124年に建立した浄土教建築の代表であり、奥州藤原氏の初代から四代がそこに安置されている。
 前半は、黄金の仏堂が表す世界が細部より紡がれていく。
金色堂は、権力の象徴として建てられた他の金色の建物とは異なる。中尊寺には蓮の花が咲き、金色堂の中央には極楽浄土へ導く阿弥陀三尊が置かれていて、心酔していた阿弥陀経の世界である、金色の極楽浄土を再現している。金色堂に施された数々の装飾には、夜光貝や象牙など、宋との貿易で手に入れた世界各地の最高の材料がふんだんに使われている。清衡は、これ以上ないほどの材料と装飾によって華麗な世界を造り上げたのである。
 後半は、金色堂に込められた清衡の想いを追う。
 死期を感じた清衡の一番の願いは、浄土へ行くことであり、地獄へ堕ちるのを恐れた。自分が奪った多くの命に対する自省もあったと、仏教文化研究所所長、佐々木邦世さんは言う。その恐れから、阿弥陀経にふさわしくなくとも、地獄へ堕ちた者を救済する六地蔵を、金色堂に置いたのであった。しかしそれは、決して自分のためだけではなく、戦死したすべての人が平和な極楽へと導かれるよう、願ってのことであった。
 私利私欲を捨てたからこそ、後世に残った美しい中尊寺金色堂。そこは、現世に再現させられた完全なる黄金の極楽浄土であり、乱世に生きた清衡の安穏への想いが込められているのだとして、番組は総括する。