研究員レポート
2026/07/30
古典インドの藁智慧 12本目: 無憂 ~炎熱烈歓迎?~ 挿話) |
エッセイ |
暑中お見舞い申し上げます
しばらく熱い戦闘の話がつづいていますので、ここでひと休みをと思います。
サンスクリットの物語によく小話が挿しはさまれるのもお手本に。
涼んでひと休みといえば・・・
紀元後四、五世紀に出たカーリダーサ(Kālidāsa)は、サンスクリット文学あるいはインド史上最勝の詩人と讃えられます。
その手に掛かると、酷暑も満更でもなさそうに。
गजवयमृगेन्द्रा वह्निसंतप्तदेहाः
सुहृद इव समेता द्वंद्वभावं विहाय ।
हुतवहपरिखेदादाशु निर्गत्य कक्षा-
विपुलपुलिनदेशां निम्नगां संविशन्ति ॥
象や牛、獅子たちはその身を炎熱にやられるうちに
友だちのように相寄り仲が悪いのもわすれて
焼けただれた森の奥から飛び出すと
水際に砂地拡げる川へ入り憩う
(『季節のめぐり』 1.27)[1])
錚々たるメンバーのお出ましです。インドの古典のなかでその重みが競われるかの動物たち。現代社会でいうなら大国でしょうか。
・・・カモン。呼ばれて彼らが逃げ込んだ清流は、焦げた皮を冷まし、内に燻る火も消し去ってゆく。
そもそもあの猛火は、天の企みだったのか。思い出そうよ、お互いがいてこそと。
意を受けて我が身焼く森、走る川の連繋プレーに、ついつい象も鼻シャワーを周りにお裾分けして。なんだかウれっシ(牛)シっシ(獅子)~気分。
振り返れば、渦巻いていた炎は天へ煙と消えてゆく・・・
カーリダーサのことばに心酔わせたひとのなかに、自身も詩聖と仰がれたタゴール( রবীন্দ্রনাথ ঠাকুর Rabindranath Tagore 1861-1941)がいました。互いを尊び合えるのが和平と、その実現に世界を駆けたタゴールは、この詩になにを思ったのだろうと。
地球にいろいろ今起きていることが、思わぬよき果へとつながりますように。
暑気払いに、お声を拝借。メラメラ、サラサラ、パオ~、モ~、ガオ~慈愛ください。
(挿話)完
脚注
- 原題はRtusaṃhāra。季節それぞれの美しさを歌う。その文体の単純さはカーリダーサによる真作であるかを疑わせているが、ここではそれも生きているよう。準動詞を追いかければそのまま、停滞する状況から平安へと一気に動作が進む様を思える。
底本:The Complete Works of Kālidāsa, V. P. Joshi(ed.), Leiden, E. J. Brill, 1976 (1st ed.) .
