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研究員レポート

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こころと社会

宗教情報センターの研究活動の成果や副産物の一部を、研究レポートの形で公開します。
不定期に掲載されます。


2026/02/18

2月18日(夜)より始まるラマダーン月(断食月)に寄せて

こころと社会

荒木亮(専任研究員)

2026年(ヒジュラ歴1447年※1)のラマダーン月(断食月)が日本時間では2月18日(水)の夜より始まり、3月21日(土)頃のイード・アル=フィトリ(断食明けの祝祭)まで約30日間にわたって世界中のイスラーム教徒(ムスリム)が断食の実践を行います。

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1.イスラームの断食とは?
ラマダーン月の断食は、基本的には一日のうち太陽の出ているあいだに行われます。つまり日の出前(厳密には夜明け前[ファジャル]の礼拝の前)から日没(厳密には日没の礼拝[マグリブ]のアザーンが流れる時)までのあいだに食べたり飲んだりをしないという規則であり、夜間は自由に飲食ができます。ちなみに、全てのムスリムが絶対に守らなければならないわけではなく、幼児やその母親、病気の者や旅行者などは断食が免除されます。また日中に命にかかわるような重要な仕事に従事する者は断食を免除されたり、別の日に振り替えることも可能であるという考え方を説くイスラーム法学者もいるようです。
以下に、断食期間中の日の出や日没、および礼拝の時間が記されたラマダーン・カレンダーを掲載しておきます。
 
  

【左表:東京ジャーミィ発表のラマダーン・カレンダー】 
(出典:東京ジャーミィのHPより_https://tokyocamii.org/ramadan-2026/)
【右表:在日インドネシアムスリム協会(KMII)発表のラマダーン・カレンダー
(KMIIのHP:https://kmii.jp/)

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2.ラマダーン月の過ごし方
ラマダーン月の過ごし方を具体的に見てみましょう。
日本在住のムスリム(会社員)に断食月中の一日の過ごし方を大まかに教えてもらいました。お仕事がある平日は以下のようなスケジュールで断食に取り組まれているようです。

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  04:00:起床・朝食(サフール)
  05:00頃:断食の開始(イムサック)
  05:15:夜明けの礼拝(ファジャル)
  05:15~07:00:仮眠ないしは勉強・読書
  07:00:シャワー・出勤準備
  08:00:通勤
  09:00:勤務開始
  12:00~13:00:昼休み[正午の礼拝(ズフル)・パワーナップなど]
  13:00:勤務[~18:00_午後の礼拝(アスル)]
  17:30頃:断食の終了・イフタール(軽食)・日没の礼拝(マグリブ)
  18:00:通勤
  19:00:帰宅・夕食・入浴
  20:00:就寝前の礼拝(イシャー)
  21:00:翌朝食の準備
  22:00:就寝/タラウィー礼拝+クルアーンの朗読
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3.イフタールは軽めにどうぞ!!
イフタールと呼ばれる断食直後の食事では白湯や甘い飲み物、デーツやビスケットといった軽めの飲食物を摂取するのが一般的です。すぐにがっつり食べたくなるように思いますが、十数時間断食をしていた直後です。急にたくさん食べて胃がびっくりする、という事態を避けるためにもお腹にやさしく栄養を補給しやすい物から摂取していくのがかれらのやりかたです。


【写真左:モスク(東京ジャーミィ)にて配布された水とデーツ(2025年3月、調査協力者の提供)】

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4.断食のあれこれ
既述の通り、中東のムスリム社会のみならず日本も含む世界中のムスリムがいまこのラマダーン月の時期に断食に取り組みます。ただし、ご存じのように日の出と日没の時間は日々変化していることから、ラマダーン・カレンダーにも記載のように日々の断食開始時刻(イムサック)と断食終了時刻(マグリブ)が一定ではありません。
この期間が冬場に重なっている今年の日本では日の出から日没までの時間がだいたい13時間くらいになりますが(※注2)、逆に南半球に暮らすムスリムは、夏場で熱く日も長い環境で断食の実践を行っています(※注3)。とはいえ、季節に限らず飲食をせずに日中を過ごすのは決して簡単なことではないので、職場や学校など身近に断食を実践するムスリムがおられる方は、断食という宗教実践へのリスペクトはもちろん、多少なりかれらの体調に配慮できるとステキだと思います。

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5.神聖な月には断食と善行を
ラマダーン月はイスラームにおいてとても神聖な時期とされ、ムスリムは断食のほか、心の汚れを避けることが推奨されています。加えて、この時期に行われた善行は、普段に比べて何倍、さらには何十倍もの徳が積まれるとも言われます。
多くのイスラーム社会では日没後に家族や友人、知人などが集まって断食明けの食事(イフタール)を楽しみますが、モスクなどでは参拝者や恵まれない者に食事が振る舞われることもあります。そうした光景には、無事に一日の断食に取り組めた歓びと、普段いじょうに善行に勤しむムスリムたちの心性が映し出されているのかもしれません。


[参考]
イスラーム社会におけるラマダーン月の様子を詳しく知りたい方は、インドネシアにてラマダーンを経験した研究員のレポートをご覧ください。

[注]
※1.ヒジュラ歴とはイスラーム世界の公式の歴であり、預言者ムハンマドがメッカからメディナへ移住(ヒジュラ)した西暦622年を元年(1年)としそれ以降、太陰暦に基づきカウントされて今日に至ります。イスラーム暦とも呼ばれます。

※2.なおラマダーン月の時期は毎年イスラーム暦の第9月と定められていますが、イスラーム暦それ自体が1年を約354日とする太陰暦に基づいており、現代の太陽暦(グレゴリオ暦)に基づく約365日で構成されたカレンダーに比べると約11日ほど少なくなっています。したがって、昨年(2025/1446H)のラマダーンは3月1日頃に開始し、また来年(2027/1448H)は2月8日頃に開始される予定です。ちなみに、イスラーム暦では一日の始まりが「日の出」ではなく「日没」からであるため、ラマダーンの始まりも2月18日の夜からとなります。

※3.もちろん日本も夏場にラマダーン月が重なることもあり、今から15年くらい前になりますが、2011年は、8月がラマダーン月の時期とほぼぴったり重なりました。「あの夏の断食は蒸し暑く時間も長くて大変だったわ」といった話は在日歴が長いムスリムの語り草となり、毎年この時期になると巷で聞かれます。
 
以上