1991年2月27日「宗門の平和への強い願いを全国、全世界に徹底しようとする決議」

 いま全世界が注視している湾岸戦争が、いよいよ混迷を深めて来た事は憂慮の念に耐えない。一刻も早く完全和平が実現するよう念願するばかりである。
 この戦争に直面して、かつて米国を中心とする連合軍を相手として太平洋戦争を引き起こした哀しい日本の過去を思わずにはおれない。昭和十六年十二月八日に勃発した太平洋戦争は、我国と周辺諸国に甚大な被害を残して昭和二十年八月我国が世界で初めての被爆国になるという悲惨を伴って終結した。こうした苦い歴史を踏まえて、戦後「恒久の平和を希求」する現在の日本国憲法を採択して我国の国是としてきたところである。
 昭和二十年は人類史上初めて数十万に及ぶ原子爆弾による犠牲者を生んだ年であり、米軍の上陸作戦を受けた沖縄をはじめ、日本各地において空襲による多数の犠牲者を出した。
 中国大陸・朝鮮半島・東南アジアを中心とした諸外国の人々を戦禍に巻き込んで莫大な犠牲者を出したこの大戦中、最も多くの犠牲者を出した昭和二十年の戦没者五十回忌を三年後の平成六年に迎えようとしている。
 今、湾岸戦争という世界の重大な危機に直面し、「あやまちは再び繰り返しません:」との広島原爆記念碑の碑文に見る決意を日本国民一人一人が再確認し、自らの課題としなければならない。
 この五十回忌を迎えるにあたって、宗門は第二次世界大戦において戦禍に倒れた人々、原爆被災者あるいは戦争によって今なお後遺症に苦しむ人々に、怨親平等の立場から追悼、援助の手を差し伸べる責務がある。また、戦前・戦中を通じて、軍部を中心とした国家の圧力があったとはいえ、結果的に戦争に協力したこと、また教学的にも真俗二諦論を巧みに利用することによって、浄土真宗の本質を見失わせた事実も、仏祖に対して深く懺悔しなければならない。
 以上の要旨に基づき、次のことを要望する。
一、総局は過去の戦争協力への深い反省を表明し、「世の中安穏なれ、仏法広まれ」との宗祖の御遺訓に添うべく、全国、全世界に念仏者の平和への願いを行動に示す。
二、前項の行動を具体化するために、全宗門的合意が得られるような法要儀式その他の事業計画を策案して、全教区で実施されるよう宗務上の処置を採る。
 なおこれは、昨年十回目の法要を勤めた千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要の趣旨を全国各地に波及させる意味を持つものであり、我が宗門の平和への強い願いを全国、全世界に徹底しようとするものである。

※出典『文化時報』1991年3月6日