文字サイズ: 標準

バックナンバー

2010/10/21 第四回「「ホメオパシー」や代替医療って、どうなの?」 

情ちゃん 最近、「代替医療」という言葉が新聞をにぎわせているようね。
ホメオパシーという鉱物や植物などを薄めた水を含ませた砂糖玉を飲ませる代替医療で乳児が死亡して、母親が助産師を訴えた事件が発覚。これを受けて、8月24日に日本の科学者の代表機関である日本学術会議がホメオパシーを完全に否定する会長談話を発表したの(※1)。
代替医療とは通常の医療の代わりに行われている療法のことで、ホメオパシーは18世紀末にドイツで誕生した代替医療だけど、米国立衛生研究所がまとめた主な代替医療のリスト(※2)には、中国発祥の「漢方、はり」などのほかに仏教と関連の深い「瞑想」、ヒンズー教とも関連する「ヨーガ」、日本発祥の「レイキ」などもあるわ。
日本では、厚生労働省が代替医療の使用実態を調査する方針で、これらの医療や宗教的な癒やしにまで厳しい目が注がれそう。実際のところ、効果はどうなのかしら。
センちゃん 医学業界ではプラシーボ効果ということを聞いた事があります。これは、実際には小麦粉など薬でないものを、患者には薬として処方して、暗示による効果を与えることです。
人体は神経系によって免疫機能なども制御されており、精神的な影響が人体に及ぼすことが多々あります。ですので、精神的なリラックスなどが与える影響を含めてどのように考えるかですね。
温泉などもその良い例ですね。
宗ちゃん ホメオパシーは「砂糖玉を与える」など、本質的でない部分が強調されていますが、ワクチンの原理(ごく少量の病原菌によって免疫作用を活性化させる)は、ホメオパシーが土台の1つになっているということですね。
個人的には、全否定も全肯定も極論かなと思ったりして、でもセンちゃんほど医療に詳しくないので、様子見をしています。
それと、情ちゃんが見た米国立衛生研究所のまとめは、同研究所が代替医療をすべて有効と認めたという意味ではないです。同研究所には代替医療の効果を検証したり、いわゆる西洋医学とのバッティングや相乗効果を真剣に調べたりするチームがありまして、代替医療の研究センターを作っています。その彼らも怪しいといっている代替医療もあります。
センちゃんが言うように、心理面での効果の意義は無視できず、かつて「笑い」によって膠原病の苦痛を軽減できた新聞記者ノーマン・カズンズが、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で精神療法による身体の治療についての研究チームに迎えられたことがありました。
サイコオンコロジー(精神腫瘍学)というのは、心のケアが癌の治療に有効であるという、かなり知られていることをきっちり調べる学問です。例えば、癌の再発を恐れている患者にとって、ヨーガの実践などは有意義なようですね。
かつて『TIME』は、信仰と健康という特集を組んだことがありました(※3)。記事はやや浅いものでしたが、基本的には信仰を持つ人の方が健康で長生きする、というストーリーでした。もちろん、まともな信仰ということですが。
情ちゃん 先日、米軍がイラク戦争やアフガニスタン戦争でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になった兵士にレイキやはりで治療を施すという記事(※4)があったけ れども、その一方で、昨年、米カトリック司教団は「レイキは無効で神との関係性を壊す」などとして禁止し、一昨年にはマレーシアで、ヨーガはヒンズー教の影響が強いとして禁止するファトワ(宗教令)が出されているのよね。
宗教は心を救い、それが影響して身体を健康にする側面もあると思います。そのような中で、仏教の修行法の1つである「瞑想」が代替医療のリストに加えられているということが、仏教以外の宗教から禁止されたり、良くない評価を得たりしないのかと、ちょっと心配。
宗ちゃん レイキって、もともと臼井甕男(1865年-1926年)が編み出した日本発の「霊気」が世界に広まって、近年の癒しブームの中で、逆輸入されたものですね。バチカンや、米カトリック司教団のようなところは、癒しブームなどに否定的ですが、実際の信者さんたちはこうしたものに自然に触れているのではないでしょうか。それが、米国立衛生研究所の調査にも、代替療法の広がりとして現れてきているのではないかと思います。
レイキと比較してのホメオパシーの難しさは、身体に物理的に手を加える(レメディーという砂糖玉を服用する)、あるいは西洋医学的治療の排除(身体に傷を付ける、薬の服用や他の医学的治療の拒絶など)に踏み込んでいることと、万能薬のように受け止められたところにあると思います。
西洋医学の治療との適切な棲み分け、あるいは共存の可能性を追っているのが、米国立衛生研究所の調査でもあります。
ところで、この間の宗教学会で聞いて驚いたのですが、ヨーガのアーサナ(さまざまなポーズ)のほとんどは、西洋の体操を踏まえての近代の産物だそうですよ(愛知学院大の伊藤雅之准教授の発表)。だから、ヒンドゥー教の影響が強いとヨーガを禁ずるのは(気持ちはわかりますが)健康体操を禁止しているような無理があるかもしれません。
ホメオパシーの考えは、ワクチンに似たところがありますね。人体が持つ抗体反応の力を増強する形なのですね。また現在の花粉症の治療方法の一つとして花粉を薄めたカプセルを飲むことで、花粉に対する免疫過剰状態を緩和する作用なども報告されていますね。
人体の免疫機能は不思議なことがたくさんあるので、一概に効果あるとかないとか判断するのは難しいかもですね。
センちゃん こんな記事を見つけました(※5)。
日本学術会議がホメオパシーを否定する談話を発表したのは、ホメオパシーを過信して通常の西洋医学の治療を受ければ助かったと思われるのに、そうせずに亡くなった患者が相次いだからです。
日本学術会議の副会長は「ホメオパシーはまじないや祈祷にすぎない」と語っています。その一方で「ホメオパシー療法家は、利用者の悩みをきちんと聞いている。現代医療も心のケアをどうするのか真剣に考える段階に来ている」と、通常の医療の問題点も指摘しています。
宗ちゃん センちゃん、記事おもしろかったです。
で、話を元に戻すと、米国立衛生研究所の代替療法研究では、慢性疾患や生活習慣病(糖尿病など)のような、改善はあってもなかなか完治は望めない疾患について、瞑想が効果を発揮することなどに注目しています。マサチューセッツ大学医療センターのカバットジン氏は、瞑想の実践が具体的な生活改善にもつながったことを挙げています。
ホメオパシーにはこれはぴったり当てはまるかどうかわかりませんが、少なくとも、心の持ち方や、不摂生な生き方を改善する方向にもっていく治療者の存在は、有意義かと思います。
多くの助産婦さんがホメオパシーを信奉しているのは、現在の産婦人科に、自然の摂理を無視した面が目立つからです。入院期間を見越して出産日をコントロールするので、週の初めの特定の曜日に出産が多いなど。このようなことに対して疑問を持つ助産婦・妊婦やその家族が、相当数いて、それらに代わるものを求めているということでもありますよね。
参考資料
※1『産経ニュース』2010年9月8日
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100908/bdy1009082112001-n1.htm
※2米国立衛生研究所 補完代替医療センターhttp://nccam.nih.gov/health/whatiscam/
※3『TIME』2009年2月23日号 「How Faith Can Heal?」
※4『東京新聞』2010年7月4日 
※5『産経ニュース』2010年9月26日
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100926/bdy1009261802001-n1.htm