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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

日本100巡礼 玄侑宗久が導く埼玉県の伝統行事「脚折雨乞」への旅

2012/10/17 (Wed) 20:00~20:52 BS日テレ
キーワード
脚折雨乞、雨乞い、神事、龍神、仏教、神仏習合、自然崇拝、民間信仰
参考
番組公式
 臨済宗妙心寺派福聚寺住職・玄侑宗久氏の提案のもと、著名人が寺社仏閣、巡礼の地、パワースポットなどを巡る。第三回となる今回は「龍が探し求めているもの」という玄侑氏のキーワード を頼りに、原千晶氏が4年に一度の神事、脚折雨乞(すねおりあまごい)が行われる埼玉県鶴ヶ島市に向かう。
 脚折雨乞は全長36mに及ぶ蛇体(龍蛇と呼ぶ)を300人以上の男が担ぎ上げ、同市の白髭神社から雷電池(かんだちいけ)まで練り歩き、龍神に降雨を祈願する神事だ。平成17年には国の選択無形民俗文化財にも指定された。
 番組内では地域の人々が一丸となり脚折雨乞を成功させようとする様子が紹介されている。
 脚折雨乞は鶴ヶ島市の白髭神社で祈祷が行われてスタートする。神社のご神木は「脚折の大ケヤキ」と呼ばれる樹齢約900年のケヤキである。番組ではこのケヤキは長い年月、鶴ヶ島の人々を見守ってきたのだと紹介されている。現在、脚折雨乞を執り行っている脚折雨乞行事保存会の前身が「けやき会」という組織だったことからも、住民と脚折の大ケヤキとの深い関係が窺える。
 脚折雨乞に熱い思いを抱く人は多い。年老いた竹網職人が龍蛇の目玉を作る技術を継承した自動車工場勤務者や、白髭神社から雷電池への道中における龍蛇の損傷をなくすため、設計に苦心する道路設計士など、雨乞いの準備に勤しむ地元の人々の姿が紹介される。また、今回の総合指揮者の横沢氏は、自分がもともと埼玉県外の人物であることを気にかけており、「新住民だからできないと言われるのも嫌だし、頭を下げて仲間になることも嫌だ。自然なかたちで溶け込んでいきたいと思っている」と語る。
 雨乞いが行われる当日、上州板倉神社の神水が龍蛇の口に注がれる。この時から、龍蛇は龍神と名を替えるという。(以下でも「龍神」と記す)龍神が男たちにより担がれ、まず向かうのは真言宗智山派の寺院、善能寺だ。善能寺では住職により、雨乞い祈願が行われる。神事である雨乞いに寺院が参加する理由について善能寺24代目住職の諸井信之氏は「作物が枯れることを恐れ、神仏の救けを請う住民の思いが神社やお寺の人にも伝わったのだろう」と話す。
 善能寺での雨乞い祈願が終わると、龍神は雷電池へ向かう。道中の映像には若い男性、壮年の男性が一緒になり龍神を担ぐ姿が映し出される。また、休憩所のシーンでは前出の横沢氏がメガホン越しに指示を出し、それに合わせ男性たちが龍神を担ぎ上げる。
 雷電池に到着すると、男たちは龍神を担いだまま池に入っていく。池の中を龍神が回り続けるなか、「雨 雨 たんじゃく ここにかかれ 黒雲」と人々は降雨を祈願する。「たんじゃく」とは帝釈天のことで、番組ではこの祈願の言葉を「仏教神話に出てくる雷神、帝釈天への切なる願いなのだ」としている。このあと、龍神の身体を池の中で、ばらばらに壊し池を汚す。そうすることで龍神を怒らせ、雨を降らせるのだという。
 番組の最後、脚折雨乞を間近で見た原氏は、玄侑氏への手紙として「龍が私たちに身をもって示そうとしているもの、それは他人を思いやり、皆が一つになる人の和ではないか」と自身の思いを綴る。これに対し、玄侑氏は「お祭りの『わっしょい』は『和を背負う』という意味。祭りに向け、皆さん切羽詰まって大変な準備をしないといけない。龍神を背負い歩くことも切羽詰まる。本当に命がけの和ではないか」とまとめている。