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日本国内で放送された宗教関連番組のレビューです。

奇跡体験アンビリバボー「戦慄 前世の記憶語る主婦」

2010/08/05(木)19:57~20:54 フジテレビ
キーワード
催眠療法・前世・
参考
番組公式
 今回の「奇跡体験」は、人間に前世が存在すると主張するものである。
 東海地方在住のある主婦は、催眠療法士・稲垣勝巳氏に催眠をかけられたところ、本人も知らない前世の記憶がよみがえったという。

 この催眠とは、被験者を催眠状態にして過去の記憶を遡りストレスの原因を探る「退行催眠治療」というものである。この主婦は脊椎の持病の痛みを軽減させるために稲垣氏の治療を受けたのだ。催眠中に前世の記憶を遡らせてみると、彼女は日本語ではない別の言語で何かを語り始めたのだ。そこで稲垣氏が中部大学で言語学を研究しているチームに解析を依頼したところ、彼女はネパール語で「自分はナル村という村の村長で、タマン族の男性ラタラジューだ」と語っているということが判明した。しかし彼女はネパール語も学んだことはないし、ネパールに行ったこともないという。このように学んだことのない言語を突如話し出す現象を「真性異言」と呼ぶ。これは、前世が存在したことを証明しうる現象だという。この現象は世界でもたった4例しか確認されていなく、しかも映像が残されているケースは今回の主婦の例が世界初である。
 そこで2回目は中部大学の言語学の研究チームの立ち会いのもとで、催眠療法を試した。日本語を話せるネパール人に催眠状態の彼女にネパール語で質問したところ、彼女はネパール語で答えた。ネパール語で会話をしたのだ。彼女はその後もネパール語で24分間会話した。彼女が語ったラタラジューという男性のプロフィールをまとめると、次のようになる。ラタラジューはネパールのゴルカ地方のナル村という村の村長であった。父親と妻と子供が2人いた。父の名前はタマリ、妻の名はラメリ、息子の名はクジャウス、娘の名はアディスで、若いころに兵士として戦場に赴いた経験があり、腹部の病気で死亡した。
 立ち会いをした中部大学の大門正幸教授(言語学)によると、会話が成立していた部分は全体の約7割にも及ぶ。念のため、ネパール語を学んだ経験の有無を客観的に確認するため、稲垣氏はポリグラフ検査(ウソ発見器での鑑定)まで依頼した。しかし、その結果、彼女はネパール語の知識は全くないことが明らかとなった。彼女は催眠実験の後、ラタラジューが見たであろう景色がフラッシュバックするようになり、ナル村と思われる村の風景をスケッチして取材班に渡した。
 そこで番組の取材班はネパールに飛んで、現地取材を試みた。ナル村は確かに存在した。だがナル村でラタラジューを知るものはいなかった。そこで取材班は戸籍を調べようとしたが、ネパールで最初に国勢調査が行われたのは1958年でそれ以前の戸籍はなく、1958年生まれの彼女の前世は当然それ以前であって、確かめようがなかった。念のため、現地の役人に催眠状態の彼女の映像を見てもらうと、役人は名前がラタラジューではなく、ラトナラージュに聞こえると言った。だが、ラトナラージュは15年前に死んだという。しかし、それでは彼女は1958年生まれであるため辻褄が合わなくなってしまう。そこでナル村の歴史に詳しいという村の最高齢の男性の息子から、村の中では数少ない、若いころに兵士として働いたことがあるラナバハトゥルという人物が昔にナル村にいたという情報を得た。取材班がラナバハトゥルの孫の家に訪れると、その辺りは、彼女が描いたナル村の風景のスケッチに酷似していたのだ。しかしラナバハトゥルの孫によると彼が死んだのは40年前で、またもや辻褄が合わなくなってしまった。ナル村では死人を埋葬して墓を作る習慣がないのでこれ以上の調査は不可能になってしまった。

 今回、彼女の前世とされる人物を見つけ出すことはできなかったが、ネパールに行ったこともない彼女が無名なネパールのナル村について言及したり、ナル村の風景と酷似したスケッチを描いたり、ネパール語を話し出したことはなかなか興味深いエピソードだ。今回、この番組では紹介されなかったが、「退行催眠治療」は催眠によって虚偽の記憶を作ることが可能であると、批判もされているらしい。「人間には前世がある」ことの証明はそもそも困難だが、興味を持たれた方は、稲垣勝巳氏の著書『前世療法の研究』(春秋社)などを読まれるのもよいだろう。