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宗教情報センターとは

研究員挨拶

宗教情報センターとは?

宗教情報センターの研究・発信活動は以下の三つの柱によって構成されています。宗教情報センターが目指すのは、これらを通じて「宗教の現在」についての継続性一貫性のある情報を日本の社会に提供することです。

 

地縁的・血縁的共同体が緊密に機能しなくなり、次世代育成や世代間継承が滞り、自殺者の多さや孤独死がメディアにもしばしば取り上げられています。絆の弱まりや倫理の低下として片付けられることが多いのですが、従来と異なる相互扶助を考えていく必要があるのではないでしょうか。

 

たとえば通過儀礼や年中行事が省略されるようになり、それらを通して伝統宗教に触れる機会が少なくなっています。その一方で、社会をにぎわす事件や国際情勢についての報道を見ると、宗教についての知識や見識の必要を強く感じさせられます。宗教情報センターでは、日本を中心とした宗教の現在を幅広くとらえ、典拠を示しながら、テーマに沿って継続的に情報を提示します。宗教を知るのに役立つ書籍の紹介やテレビ番組の紹介も行っています。

 

現在我々が触れることのできる仏教は、ブッダ亡き後、2500年もの長きに渡り、数え切れない人々によって守られ、伝えられてきた努力の成果です。しかし、時代や地域に応じて変化を遂げる中で、多様な形態が生じ、現代では、ひとくくりに仏教を捉えることは困難になっています。そこで、宗教情報センターでは、刊本のみならず、碑文や写本などを含めた仏教資料をもとに、仏教の変遷過程を検証し、学術的により適切な仏教理解の追究を目指します。また、その成果を一般の方々にもわかりやすい形で発信していきます。



葛西賢太
宗教情報センター
研究員 葛西賢太
東京大学大学院修了、博士(文学)。学術振興会特別研究員、上越教育大学教官を経て2002年より現職。主な著作に、『現代瞑想論』(春秋社)、『断酒が作り出す共同性』(世界思想社)、編著として『ケアとしての宗教』(明石書店)、『仏教心理学キーワード事典』(春秋社)、『宗教学キーワード』(有斐閣)などがある。

 宗教がらみの事件が日々マスコミを賑わしています。私たちにとって印象深いのは、1995年3月、東京の地下鉄に有毒のサリンガスが、オウム真理教の幹部によって撒布され、13人が亡くなられ、負傷された方は六千人超とされる「地下鉄サリン事件」です。宗教情報センターが開設されたのはこの事件の前年でした。
 この事件は、奇矯な行動をとる団体への野次馬的報道や、テロ事件に偏ったイスラームの報道など、宗教についてのやや偏った関心を強める結果となりました。宗教についての報道・記事を収集していた当センターは、事件についての扇情的な報道の氾濫を目の当たりにし、宗教についての情報をどう提示していくか、あらためて考えさせられることになりました。情報提示側としては、事実をおさえ、断片的でない情報を提供する視点を保ちつづけることが大切なのですが、現代のジャーナリズムでは、専門的な知識と経験とをもって宗教に対応できる記者を育てる余裕がなく、そうした視点の維持が難しくなっています。
 その印象は、インターネットの検索技術の発展を享受する昨今、ますます強くなっています。検索によって、私たちは何らかの公開される情報、少なくとも世評にはたどり着けますが、それが正しく適切な情報かどうかは判断がつきません。また私たちは、検索されないものは存在しないかのように受け止めてしまいがちです。情報をばらばらに検索するだけではない、それらをつなぐ視点やそこにはない視点から、さまざまな宗教を知ることが有用でしょう。
 たとえば、英国国教会の教会員として生まれた人はクリスチャンとして、また、ムスリムに生まれた人はイスラーム的な価値観を通して、また神社のお膝元で育った人は氏子として、それぞれ自文化をとおしてこの世界をとらえます。これらの宗教を外側からみると、それは一つの興味深い異文化となります。こうした異文化と、経済や政治のみならず文化を通しても関わっていく時代になっています。彼らの価値観を知り、社会を理解するためには、自文化も見直す必要があるでしょう。外国語を知らなければ自国語もわかっているとはいえないとゲーテは述べたそうですが、宗教という異文化を知ることで、自らを鏡に映すようにして見直すことができるでしょう。ところが、こうした宗教の日常は、ジャーナリストの扱う記事にはなりにくいのです。

 

 私たちは、このウェブサイトからの発信で、情報の出所を明示し、継続して事象を追い、教義や理念よりも人の姿を描くことにより、宗教が何かを知るという課題に応えたいと願っています。宗教の守備範囲は生活の全領域に及びます。私たちは、現代人のこころと社会、宗教についてのさまざまな情報の収集と再提示、日本文化とも深く関わる仏教の変遷を踏まえた研究、この三つに取り組んでいます。世界の研究機関や研究者との提携による情報提供もあります。

 

 宗教情報センターの設立と運営には、私たちの願いの理解者でありスポンサーでもある仏教教団・真如苑をはじめとして、数多くの方のご支援をいただいております。今後とも、諸方面からのご支援や当方からの貢献、共同研究や共同事業がさらに展開できることを願って、挨拶に代えさせていただきます。

宗教情報センター 研究員 葛西賢太